いわしの日

10月4日は「いわしの日」。「い(1)・わ(0)・し(4)」と読む語呂合わせから制定されました。安くて美味しくて栄養豊富ないわしをPRすること、また豊かな海を愛しはぐくむ心を育て、水産資源の有効利用について理解を深めてもらうことが目的です。

いわしは陸にあげるとすぐに弱ってしまうことが由来となり「鰯」と書きますが、その弱き魚が無駄にならないように色々な保存が考えられてきました。稚魚を茹干したシラス干し、薄い板状に干したタタミイワシ、茹干したニボシ、素干したゴマメ、竹串に刺し干したメザシなど干物だけでも諸種あります。ほかにも魚醤などの旨みがある調味料に加工され、海外ではタイのナンプラー、ベトナムのヌクマム、イタリア料理に使われるアンチョビが有名です。最近は体に良いとされる栄養が詰まった缶詰が人気で、かつてテレビの影響でスーパーから青魚の缶詰が消えたことがありました。しかし女心と秋の空、いつしかその熱気は冷め、今はリリーフとして静かに出番待ちしている。秋の空といえば、天気が下り坂になり雨が近づいているときにいわし雲が現れます。この雲が現れると「いわしが大漁になる兆し」といわれていますが、エビデンスに基づくものではないようです。その兆しがあったかはわかりませんが、その昔、いわしが大漁となり余った魚を田に埋めたところ、米が豊作になったそうです。それから五穀豊穣を願うものとされ、田作り(ゴマメを炒って砂糖と醤油で甘辛く煮絡めたもの)がおせち料理や祝膳に食されるようになりました。節分には厄除け・厄払いのために、柊鰯を飾っていわしを食べる風習があり、私たちはなにかといわしに願いを込めてきました。しかし、わたしたちは願いばかり込めて感謝を忘れてしまいがちです。せめて海のものと山のものを使ったおこわを作って秋の恵みに感謝をしましょう。

ちなみにおこわ(御強)とはもち米を蒸す料理が硬かったことから名づけられたこわめし(強飯)を現わす女房詞で、女房(宮中や院に仕えた女官)が使いはじめ、語頭に「お」(おこわ・あおもの・おいしい・おなか・おかずなど)、語尾に「もじ」(しゃもじなど)や「もの」(こうのもの・あおものなど)をつけて丁寧さを現す言葉として、室町時代から長きにわたり使われてきました。

上品で優雅とされた言葉も今は日常に使われるようになり、秋の夕暮れにいわし雲を見ながら女房(妻)は思うのです。食欲の秋だから「おなか」が満たされるメニューがいい。いわしの缶詰の汁を使って調味いらずの「おこわ」なら簡単でいいかも。炊きあがったら、「あおもの」のレタスを入れて少し蒸して、「しゃもじ」でさっくりと混ぜて出来上がり。秋の行楽に出かけるなら、冷めても「おいしい」五目にしよう。これなら「こうのもの」があれば「おかず」はいらないしね。「おにぎり」もいいけど、今回はレタスの彩りを見せたいから、わっぱに詰めよう…などと考え、いわし雲の予兆も忘れ週末のウェザーニュースを検索する。(笑)それにしても女房詞がこんなにも後世に広く普及するなんて、思ってもみなかったでしょうね。(笑)

レシピ

【材料】3~4人分

    • もち米  2合
    • いわしの醤油煮(缶詰)  1缶
    • ごぼう  10cm
    • 人参  1/3本
    • しいたけ 3枚
    • 生姜 1片
    • 808ファクトリーレタス(グリーンリーフ) 5枚
    • 酒 大さじ2

【作り方】

    1. もち米は洗ってザルにあげる。イワシ缶はザルにあけて水切りする(汁は後で使用)。
    2. ごぼうはささがき、人参と生姜は千切り、しいたけは薄切りにする。
    3. 釜にもち米を入れ、①の汁と酒を入れ、2合目の目盛りまで水加減する。いわしの身、②の野菜を入れて炊く。
    4. 炊きあがったらいわしの身を半量取る。残りのいわしをほぐしながら全体に混ぜる。食べる5分ほど前にちぎったレタスを入れて炊飯器のフタをして蒸す。全体をさっくり混ぜて器に盛り、いわしの身を戻し入れて彩りよく盛る。

■レシピ協力:きたじまよりこ(スタイリング・撮影・コラム)