いい文の日

11月23日は「いい文の日」。「い(1)・い(1)・ふ(2)・み(3)」と読む語呂合わせから制定されたそうです。手紙の楽しさ、手紙を受け取るうれしさを通じ、文学文化を継承する一助となるようにとの思いが込められているそうです。ちなみに毎月23日は「ふみの日」です。

文の読み方で「ふみ」は手紙の意味で使われることが多く、「ぶん」は一言でいえば文章を意味します。以下の「文」は「ふみ」と読んでほしい。

平安時代に仮名文字が使用されるようになり、文は貴族の男女間で贈り合うという風習が生まれました。というのも高貴な女性はめったに外に出ることがなかったため、男性は自分の想いを和歌にして贈りました。そこに文香(香木を砕いたもの)を添えたり、文挟み(木や花の枝に文を結んだもの)をするなど工夫を凝らし、女性から返事が届いて恋がスタートしたそうです。そんな雅やかな時代背景からひらがなを駆使し、個性豊かな文学作品がたくさん生まれました。世界最古の恋愛小説といえば紫式部の「源氏物語」で、ご存じ宮中を舞台に光源氏の恋愛模様が長編で描かれています。そして世界最古のブログとも言われている清少納言の「枕草子」は、宮中の暮らしや自然の様子など、鋭い観察力により綴られた随筆です。どちらも1000年以上昔に書かれた文学ですが、今もなお人々に愛され読み継がれています。

現代も個性豊かな文学作品がたくさん生まれていますが、メールなどは便利な伝達ツールとして登場し、手書きの文(手紙)はどちらかといえば少し重みのある告白シーンに登場するように思います。ちなみに手紙という言葉が使われるようになったのは江戸時代のことです。

世の中で文のやりとりが少なくなり、我が家の郵便受けも空虚な箱と化し、入っているのはちらしや請求書といった面白みのないものばかり。そんな箱から中身をゴソっと取り出して、不要なものをわける作業が習慣となっていたある日、その中に紛れて一枚の絵葉書が入っていました。コロナ禍でなかなか会えない友人からの裏庭茶会の誘いの便りでした。葉書に綴られた丁寧な内容、関連性のある弁当絵の切手、オリジナルの住所印が押されていて、筆忠実が伺えるものでした。最後にご質問あればLINEまでと記され、便利なツールも使う友人のはからいに茶会の前から心踊らされたのでした。デジタル時代にあえて手書きの文を送るというのは、こんなにも強い感動を残すものだと実感しました。その後、茶会のお礼を私なりに伝えようと投函したところ、不覚にも84円切手を貼ったらしく、友人から葉書は63円だと指摘され、平安貴族のように扇で顔を隠したい気持ちになりました。 しかし、あれから素敵な葉書や記念切手を見つけると購入するようになり、いつでも文が送れるよう準備だけは整っています。(笑)

さて、今回はそんな文を手にしたときの嬉しい気持ちをイメージして、ポットパイを紹介したいと思います。ポットパイを崩して具材を確認しながら食べるときのうれしさと、文が届き開封して内容を読みすすめるときのうれしさはちょっと似ている気がします…そしてそこにはレタスが入っているなんていとをかし。

レシピ

【材料】2人分

    • 牡蠣(加熱用)  120g
    • 808ファクトリーレタス(グリーンリーフ)4枚
    • 玉ねぎ  1/2個
    • ベーコン  1枚
    • 冷凍パイシート  1~2枚
    • 薄力粉 大さじ2
    • 牛乳  1カップ
    • コンソメの素(顆粒)  大さじ1
    • 塩・こしょう  少々
    • 溶き卵  適量

【作り方】

    1. 牡蠣は塩水でふり洗いし、ザルにあけてキッチンペーパーで水気を拭き取る。玉ねぎは薄切り、ベーコンは5mm幅に切る。パイシートは室温に戻しておく。
    2. フライパンにサラダ油を熱し、玉ねぎとベーコンを炒める。しんなりしてきたら一旦火を止めて薄力粉を加え混ぜる。粉っぽさがなくなってきたら中火にし、水(1カップ)とコンソメを加える。
    3. (2)に牛乳を加えてフツフツとしてきたら、牡蠣と大きめにちぎったレタスを加え、弱火で5分ほど煮る。ココットの七分目まで入れる。
    4. パイシートは半分に切り、ココットよりひと回り大きく伸ばし、フォークで数か所穴をあける。ココットの縁に溶き卵を塗り、パイシートをのせてしっかりと貼り付ける。パイシートの表面に溶き卵を塗る。220度のオーブンで10~15分ほど焼く。

■レシピ協力:きたじまよりこ(スタイリング・撮影・コラム)